患者さん・一般の方へ

Q&A

通常行われている治験は、主に製薬企業などが開発を進めている新しい「くすりの候補」を、医薬品としての国の承認を得るために実施する臨床試験のことです。
2003年に薬機法が改正されて、企業だけではなく医師自らが治験を企画・立案して治験を実施できるようになりました。この改正によって、企業が行う治験を『企業治験』、医師自らが行う治験を『医師主導治験』と呼んだりします。
医師主導治験では、企業治験において企業が行う治験の準備から管理を全て医師自らが行ないます。
ただし、多くの治験は企業が行っていますので、一般的に『治験』という場合には、『企業治験』を指します。

臨床試験・治験には、それぞれ参加できる基準が決められています。
当院で実施中の臨床試験や治験については、診療科のホームページ等で掲載しているケースが多いです。また、院内ポスターや広告チラシで募集をしている場合もあります。
参加の基準を満たさない場合にはご参加いただけませんが、参加したいと思われる臨床試験や治験がありましたら、一度、診療科の医師にご相談ください。

【メリット】

  • 治療薬のない疾患の治験であれば、他ではできない治療を受けることができます。
  • 通常の治療に比べより詳しい検査や診察を行い、細かな治療を受けることができます。
  • 同じ病気で苦しむ多くの患者さんに役立つという社会貢献ができます。
  • 治験によっては製薬会社から治験薬や検査の費用の負担がされることがあります。

【デメリット】

  • 説明以外の副作用が起こる可能性があります。
  • 治験薬の効果や安全性の確認のため検査や来院の回数が増える場合があります。
  • 治験薬の服用方法や生活の仕方(食事や運動など)を守らなければいけないことがあります。
  • 治験によってはプラセボ(成分の入っていない薬剤)を服用する場合があります。

いつでも参加を辞退いただけます。
どのような理由であれ、患者さんの意思が優先されます。
途中で臨床試験・治験への参加を辞退された場合でも、その後の治療で患者さんの不利益になることはありません。
担当医師は、その時点で選択可能な治療の中から患者さんに最適な治療を行います。

『臨床試験』は、多くの場合、国が定めた倫理指針等を遵守して実施し、また、『治験』は、国が定めた「臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という法律を遵守して行います。
いずれの場合にも、患者さんへの倫理的配慮が最優先されます。
臨床試験・治験に参加中は、特に安全性に注意が払われますので、通常の日常診療よりも頻繁な診察や検査で安全性の確認を行います。何か健康状態の異常が生じた場合には、担当医師が適切に治療を行うとともに、健康状態によっては医師の判断で臨床試験や治験を中止する場合もあります。
もし、いつもと違う症状が現れた場合は、すぐに担当医師もしくは相談窓口(個々の臨床試験で決まった窓口)にご連絡ください。

プラセボは、試験薬と見た目や味は全く同じで、くすりの成分を含まない偽薬のことです。
プラセボを服用しても、患者さん自身が、自分が飲んでいるくすりは効き目があると思い込むことで、病気の症状が改善することがあります。これをプラセボ効果と呼んでいます。
試験薬の効果を客観的に確認するために、プラセボを用いて有効性と安全性を比較する場合があります。

臨床試験・治験は、決められたスケジュールで診察・検査を行いますので、できる限り予定された来院日にお越しください。
ただし、ご都合が悪い場合は、事前に相談窓口(個々の臨床試験で決まった窓口)までご連絡ください。

それぞれの臨床試験・治験では、現在かかっている病気や使用されているお薬によっては参加できないことがあります。また、参加期間中に使用できるお薬に制限がある場合もあります。
臨床試験・治験への参加に同意される前に、必ず担当医師(もしくは臨床研究コーディネーター)に、現在受診されている医療機関および使用されているお薬に関して伝えてください。また、臨床試験・治験に参加中に、新たに医療機関を受診される場合や新たにお薬(薬局で購入される市販薬も含む)を始める場合は、事前にご連絡ください。

試験薬・治験薬の費用について

治験の場合には、治験薬は無償で提供されます。
臨床試験の場合は、試験薬が無償の場合と患者さんの医療保険を用いる場合がありますので、ご参加される試験の担当医師にご確認ください。

「負担軽減費」について

患者さんを対象とした企業治験では、交通費等の負担を軽減するために「負担軽減費」をお支払いしますが、謝金はありません。京都大学の場合、治験のための来院1回について7000円を、月毎にまとめて銀行振り込みでお渡ししています。
なお、臨床試験および医師主導治験においては、「負担軽減費」の設定がある場合とない場合があります。

治験期間中(原則、治験薬を使用している期間)の費用について

企業治験では、治験期間中(原則、治験薬を使用している期間)、検査の費用は治験を依頼している製薬会社が負担します。ただし、治験の対象である病気以外のお薬や初診料・再診料などは通常の保険の対象となり、患者さんの自己負担があります。
医師主導治験では、治験期間中(原則、治験薬を使用している期間)、検査の費用は通常の保険の対象となり、患者さんの自己負担となります。

臨床試験・治験への参加によって、何らかの健康被害が起こった場合には適切な治療を行います。
また、必要に応じて補償が受けられます。ただし、患者さんの故意、または重大な過失による場合には補償を受けられない場合もあります。
※なお、個々の臨床試験・治験で受けられる補償の内容が異なりますので、ご参加される際にご確認ください。

臨床試験・治験への参加に同意された場合、患者さんのカルテなどの情報を厚生労働省の担当者、治験を依頼した製薬会社の担当者などが閲覧します。また、治験薬の効果や副作用などの情報は、報告書として、治験を依頼した会社に提出されます。
その際、名前などの情報は番号や記号に置き換えられ、報告書から個人が特定されることはありません。どのような場合でも、関係者には守秘義務が課せられており、プライバシーは厳重に守られます。
また、臨床試験・治験の結果は学術目的のために公表されることがありますが、その際に患者さんのお名前やご住所などの個人情報が明らかになることはありません。
さらに、医療関係者は患者さんの秘密を守ることを法律により義務付けられおり、当院のきまりに基づき個人情報保護法に沿って患者さんの情報を取り扱いますので、プライバシーが外部に漏れることもありません。